現在、龍谷大学で日々勉強している松尾さん。彼女の夢は「博物館の学芸員になること」。そのために文化遺産学専攻がある現在の大学を選び、大学院に進学する予定だという。そんな彼女に、博物館との出会い、現在の学習の楽しさや彼女の文化遺産に対する熱い思いをガクシーに語ってもらった。
松尾さんは学芸員になるのが夢だとおっしゃいましたよね。そもそも学芸員を目指されたきっかけはなんですか?
中学の時にお世話になった社会科の先生の影響で歴史が好きになって、そこから漠然と「歴史が好きだなー」と思っていたんですけど、高校生になって自宅の近くの博物館で市民学芸員のボランティアが募集されたので、そこに応募して学芸員のお仕事を経験する機会があったんです。そこで「自分は歴史(に関わる仕事)の中でも学芸員という仕事がしたいんだな」と思うようになって、そこから学芸員を目指すようになりました。
そこから今まで時間が経っていると思うんですけど、ずっとモチベーションがあったんですか?
はい。学芸員になる気持ちは高校生から大学生になるまでの間、それをモチベーションにして大学受験をするほどでしたし、大学に入ってから現場の話を聞けたりして、その気持ちがさらに強くなりました。
すみません、私本当に無知で申し訳ないんですけど博物館の学芸員のお仕事ってどんなことをするんですか?
博物館の学芸員の仕事は、ざっくり言うと博物館に資料を集めて、専門的な知識を元に保管し、傷んだ資料があれば修復を施したり、特別展を開催したりなどがあります。
初めて知りました!では、今通われている大学の学科ではそのための国家試験の勉強をしている感じなんですか?それとも学芸員になった後の仕事の勉強をするんですか?
そうですね、学芸員は卒業の単位を取ったらその資格が与えられるので、国家試験のための勉強をするというものではないです。実際に働くようになってからどうしていくのかの技術や知識を勉強しています。
具体的な授業内容に興味があるんですが・・・
今まで受けた授業の一部になってしまうんですが、発掘の方法や資料を保管するにあっての害虫の対処法、展示するものに対する光の当て方(ルクス)や温湿度の勉強をしています。
実際外に行って発掘をしたりするんですか?
はい、今年の夏に外で発掘の授業をしました。
どうでしたか!?
(発掘)目的のものが出てこなかったんですが、今までテレビや新聞で見ていた状況とかを実際経験することができてとても勉強になりました。
大学に入ってから聞いた先生の話についても興味があります!
学芸員課程を教えていただいている先生が、日本を中心に海外の文化遺産を修復する第一人者で、その方がイースター島のモアイ像を修復された時の話とか、その場でしか聞けない話、状況によっては今あるものを駆使して修復しなければならないという実体験をお聞きしました。
それを聞いて当時の松尾さんはどんな感想を抱かれたんですか?
これまでは、テレビや新聞の情報でしかなかったものが裏側まで知れて、自分も参加してみたいなと思ったり、修復や学芸員の仕事をされている方への尊敬が強まりました。
学芸員を目指されている人が私の身の回りにいなかったのでよくわからないんですが、同じ学部の中でもどれくらい学芸員になりたいという人はいるんですか?
あまりそこまで友達内でも踏み込んだ話はしないのでよくはわからないんですが、かなり少数だと思います。
では同じ学部内にいらっしゃる他の方は、授業に対してどのような雰囲気をお持ちですか?
かなり興味を持って、楽しんで授業を受けていると思います。
文化遺産学部からはどういった道に進まれる人が多いのでしょうか?
そうですね、社会科の教師になったり、一般の会社に就職したりが多いですね。やはり大学院に進学するとなるとかなりハードルが上がるので、目指す人は少ないかなと思います。
松尾さんは大学院に進むことに対する不安はありますか?
大学院に進学するための試験はこれまでの勉強とは違った形になると思うので、四回生の時に大学の授業と、受験のための勉強を両立できるか不安ですね。
逆に、大学院に進学して楽しみなことは?
大学院生になると、私が教えてもらいたい先生が「保存修復」の先生になるんですけど、その先生から現場を任せてもらうことができるんですね。
例えば世界遺産の文化遺産の修復の立ち会いや、現場を取り仕切ったりすることができるのでそれが楽しみです。
松尾さんが今勉強している中で特に興味を持っているものはなんでしょうか?
「色彩」です。顔料を科学的に分析することに興味があって、それを続けていきたいと思っています。
例えば、建物に塗られている顔料を分析して、それを修復するときにどうしていくかみたいなことをやります。その中でも縄文時代の色彩に興味を持っていて、市民学芸員のボランティアをしていた博物館で見た赤い塗料に深い衝撃を覚えて、今でも忘れられないです。
へえ〜〜!すごいですね!私がイメージした学芸員の仕事とはまたちょっと違ってました!そのための授業とか取ってらっしゃるんですか?
あ、その授業が来年からしか取れなくて、まだ取れていないんですよ。
それは楽しみですね!やはり、昔の顔料を現代で再現するのは難しいことなんですか?
はい、顔料は顔料でも遺産だと何回も塗り替えされているので、重ね塗りの回数によっては、今見えているものとオリジナルでは違うことがあるんですよ。それをオリジナルに戻していかないといけないので、そのために科学分析をしたり、すぐに傷んでは意味がないので、100年後まで使えるものを実験を繰り返して作っていくこともあります。
私の勝手なイメージで学芸員というと、社会科の先生を目指すように、文系というイメージがあったんですが、科学の知識もないといけないんですね。
色彩は、学芸員のなかでもかなり少数の分野なのですが、最近広まってきて注目されています。
となると、歴史も科学も文理どちらも学ばないといけないんですね!大変だ…。週にどれくらい勉強されているんですか?
授業外で大体、週に6時間くらいは勉強しています。
その中で、自分の研究はされているんですか?
そうですね、これからゼミに入ってから研究をしていくので、今は自分では研究はしていないんですが、自分が興味がありそうな論文や本を少しずつ読み進めています。
将来学芸員になったら、勤めている博物館で、資料の研究を進めていくということになるんですね
はい。研究する分野によってどこの博物館に勤めるかも結構変わってくるので、博物館を探して、就職ということになります。
あの、「博物館の調べ方」ってどうすればいいんですか?全然想像がつかなくて。
まず博物館ってそれぞれ得意な分野があるんですね。そういうのを見て、自分で決めていくという感じです。
「見る」っていうのはインターネットで検索するとかそういう感じですか?
ネットで調べたり、博物館にいらっしゃる学芸員の研究内容を調べたりとかです。その研究内容は、大体の博物館では常設展とは別に「特別展」があるんですが、その特別展で学芸員の研究内容が展示されていることがあって、そこから知ることができます。
ちなみに松尾さんが行ってみたい博物館はありますか?
東京国立博物館には行けていなくて、そこが日本の博物館の本拠地になるので、そこには行ってみたいですね。
将来もそこで働きたい、みたいな願望はあったりしますか?
違う専門分野の博物館なので、私が働きたい博物館ではないのかなという気はしますね。
そういう考えもあるんですね。学芸員になる、と決めた時にご家族には相談されましたか?
あまり相談はしなかったですね。大学に進学するときに全て話して、応援してくれています。家族も自分が何をしているのかよくわかっていないと思うんですけど(笑)。
松尾さんが学習の中で大事にしていることはありますか?
諦めないということですね。研究を進めるにあたって色んな方法とか挫折があると思うんですけど、どんなに膨大な量があっても最後まで諦めないようにしています。
諦めないということですね。研究を進めるにあたって色んな方法とか挫折があると思うんですけど、どんなに膨大な量があっても最後まで諦めないようにしています。
その考えに至った経緯などありますか?
論文などを読んでいると、色んな論文に繋がっているので果てしないなと思うことがあるんですけど、それを全部漁っていくことによって出てくるものがあるとアドバイスいただいて、できるだけそうしようと思っています。
学習面で今一番楽しいことはなんですか?
フィールドワークですね。学校の外に出て教授と一緒に行ったりとかです。去年はコロナの影響でできなかったので、フィールドワークに少しずつ出られることが楽しいです。
逆に学習面で一番大変なことはなんでしょうか?
今年から授業が対面になって、そこで出てくる課題をどんどんこなしていかないといけないのがしんどかったですね。
学芸員になってやりたいことをお聞きしたいです。
学芸員になったら、学芸員の中でも様々な仕事があるんですけど、その中でも「教育」という分野に関わりたいです。展示したものを「伝える」「教える」「解説する」という学芸員になりたくて、そこに力を入れてやって行けたらなと思います。
そのために教職課程の勉強をして、教職の免許も取るつもりです。教職の免許があれば、学校との連携なども取りやすいので。
「教える」魅力に気がついたのはなぜですか?
高校生の時に行った市民学芸員のボランティアで、小学生の子供たちに遺産のことを教える際、少し噛み砕いて説明したんですね。その時に「こういうことだったんや!」とわかってもらえて、「分かってもらえて、理解してもらうこと」が楽しいなという風に思いました。
将来の学芸員になるという夢に向かっての意気込みをお願いします。
学芸員になるには自分はまだまだ遠いと思うんですが、今ある気持ちや学芸員になる過程を大切に頑張っていきたいと思います。
ありがとうございました!