めまぐるしく変化する国際社会において、日本の「顔」となるような人材の育成が急務とされてきました。ところが主に経済的な理由から、夢をあきらめざるを得ないケースも少なくありません。そんな現状に一石を投じるべく、奨学金事業を立ち上げた公益財団法人重田教育財団。「日本の未来を担う若い世代こそ、志を大きく持ち、世界に羽ばたいてほしい」と話す同財団事務局の事務局長にお話を伺いました。
重田教育財団の奨学金事業は3つの奨学金で構成されています。最初に開始したのが海外留学生に対する給付型奨学金制度ということですね。まず海外留学に着目された理由からきかせていただけますか。
当財団の代表理事・重田康光は、東証プライム上場企業の光通信の創業者です。1988年に22歳で創業した後、さまざまな苦難を乗り越えてビジネスで成功を収めることができました。自身が若くしてビジネスの世界に飛び込んだ経験から、日本の未来を担う学生や子ども達のサポートに力を注ぎたいとの思いをずっと内に秘めてきたといいます。その思いを社会に還元すべく財団を設立し、公益性の高い取り組みに力を注いできました。とりわけ、日本が国際競争力を維持するため世界の一線で活躍する人材の育成は急務だと。
ところが、留学にかかる費用は膨大で、入学金だけでも数百万円以上がかかる学校も少なくありません。我々は優秀な学生がお金の問題で勉学に取り組めない状況を何とか改善したい、夢に挑戦し続ける皆さんを応援したいとの思いから、留学生に対する給付型奨学金制度をスタートさせました。近年は500名ほどの応募があり、皆さんのお役に立てていることと自負しております。
さらに2つめの奨学金事業として、都内23区の母子世帯に対する援助金の給付をスタートされましたね。
海外留学生への支援をはじめて、気づいたことがあります。実は留学を考える以前の時点で「学ぶ」機会を得るのが困難な子ども達もいるのだということです。特に東京など都市部では物価も高く、格差が著しい傾向にあります。ひとり親の母子世帯では、経済的な理由から「学ぶ」ことはどうしても後回しになってしまうためです。
そこで未就学のお子様1人につき10万円の一時金を支給する支援事業をスタートさせました。当初は月5,000円相当の援助金でしたが、より手厚い支援を行いたいという思いから、6万円から10万円に増額しています。区役所や社会福祉協議会などの行政やNPO団体の皆さんと密にコミュニケーションを取り、「食育」「保育」「文教」「その他養育に関するもの」を使途とした返還義務のない給付型の支援を実施しています。
3つめが、医学生に向けた教育資金貸与制度です。こちらは新たな取り組みとのことですが、どのような経緯から支援を始められたのでしょうか。
さまざまな分野で人材不足が問題となる中、特に医師不足による医療崩壊は深刻なものになってきています。昨今のコロナ禍においても、より問題が明らかになったと思います。以前から言われているとおり、医学部進学には多額の費用がかかるのです。比較的安価とされる国公立に進学できる人数は限られていますから、私立はさらに学費がかさみます。国立・私立問わず、医学部進学を目指す方々を支えたいとの思いから、高校在学中からの支援を行うことを決めました。
こちらは1年ごとの貸与型ではありますが、利子はつけておりません。また貸与額の年間上限はありますが、学費、入学費だけでなく、家賃、引っ越し費用などの生活費用での活用も可能です。オンライン学習だけで医学部受験を目指しているなど使途についても柔軟に設定しています。
成績はもちろんですが、各ご家庭の経済状況も貸与基準となるのでしょうか。また、今後の募集については、増枠をお考えですか。
はい。ご家庭の経済状況も鑑み、必要な方に届けるように考慮しています。また今後は認知度の向上を目指し、募集を増やしていこうとは考えております。奨学金事業は開始から日が浅いこともあり、とにかく必要な方に支援を知っていただくことが肝要だと思っています。ただ、今後も社会情勢の中で必要な支援があれば、積極的に取り組んでいくことをビジョンとしています。
お話を伺い、未来の人材にかける熱い思いが伝わってきました。最後に重田教育財団の皆様から学生へのメッセージをお願いします。
当財団代表理事の重田は、大学を中退し、一代で学生支援事業を築き上げました。先ほどもお伝えした通り、自らの志を高く持ち、あきらめずに取り組み続けたとの思いがあります。ですから若い皆さんにも、自分が本当にやりたいことや目指すものがあるならば、全力で挑戦してほしいのです。経済的な問題に直面してもあきらめてほしくありません。思う道をまっすぐに進んでいってほしいと願っています。そのためには私たちを含めたさまざまな奨学金をどんどん活用してほしい。将来の夢を手助けできる存在となれれば、これほどうれしいことはありません。私たちの支援で学びを極めた学生の皆さんが成功を収め、さらに若い未来の世代に支援する…そんな良い循環が生まれることを願っています。
海外への留学生から、母子世帯(母子家庭)、医師を目指す高校生まで多くの皆さんに活用してほしい制度だと感じました。代表理事の理念を受け継ぎ、海外や医療の世界に羽ばたく人材がどんどん育っていくと思います。ありがとうございました。
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