出版社は、学生からの人気が高い一方で募集人数が少なく、難易度の高い就職先の1つです。出版社への就職をかなえるためには、就職活動を本格的にはじめる前の学生のうちにしっかりと準備しておくことが大切です。
本記事では、出版社就職をかなえるためにまず知っておくべきである出版社の特徴、仕事内容、さらには学生のうちに取り組んでおくべきことを詳しく解説します。
早いうちから準備に取り組むことで周りの就活生との差をつけ、夢に一歩近づきましょう!
出版社就職を目指す人にとって、出版業界の現状や今後の動向は気になる点でしょう。ここでは、出版社の特徴を詳しく紹介します。
全国出版協会・出版科学研究所が発表している出版月報によると、2022年1月~12月の紙と電子を合わせた推定販売金額は、1兆6305億円でした。紙と電子の合計は前年比2.6%減少し、紙の出版物に関しては6.5%減少した一方で、電子出版物は7.5%増加しました。またコロナ禍前の2019年と比べると、紙と電子の合計は5.7%増加し、紙の出版物は8.6%減少しましたが、電子出版物は63.2%増加しました。インターネットの普及や若者の活字離れの影響を受け、紙の出版物の売上は年々縮小傾向にありますが、逆に電子出版物の売上は年々拡大傾向にあることがわかります。
前述したとおり、紙の出版物の売上は毎年減少し続けています。原因としてあげられるのは、インターネットやSNSの普及による若者の活字離れです。空き時間には本を読むのではなく、動画を見たりゲームをしたりSNSをチェックしたりする人が大多数です。さらに、今はスマートフォンやタブレットを使用して手軽に情報を入手できるため、紙媒体の書籍や雑誌をわざわざ購入しなくても無料で情報収集が可能です。そのため、紙媒体の出版物を購入する人は減少傾向にあります。
紙の出版物が減少している中、電子出版物は売上を伸ばしています。スマートフォンやタブレットを持っていれば、いつでもどこでも手軽に書籍や雑誌を読めるため、電子出版物の利用者は増加しています。利用者のニーズに合わせ、定額読み放題やインターネット書店などのサービスも展開されています。また、ここ最近はオーディオブックの人気が高まっています。オーディオブックとは、書籍をナレーターや声優が朗読した「聴く本」のことです。運転しているときや家事をしているとき、歩いているときなどにながら読書ができます。これは特に活字離れが進んでいる若年層にも浸透しており、今後の売上増加が期待されます。
出版社各社は、日本の漫画やアニメの海外進出を進めています。その結果、海外での漫画の売上が伸びている企業が存在します。Netflixなど、日本のアニメを海外でも配信するサービスが登場して、原作の漫画のファンが海外に増えたことも、海外進出のきっかけとなっています。
M&Aとは「Mergers(合併)&Acquisitions(買収)」の略で、2つ以上の企業が合併して1つになったり、ある会社が別の会社を買収したりすることです。紙の出版物の売上が減少し、電子出版物の売上が急速に伸びている現状を踏まえ、出版業界ではもともと電子書籍を取り扱っている企業をM&Aで買収する動きがあります。これは、紙媒体の出版物の売上減少に直面した出版社が、今後の事業を継続するための戦略といえます。
出版社と一言でいっても、その中にはさまざまな仕事が存在します。就職後のイメージをつかむためにも、どのような仕事があるのかを把握しておくことは必要です。ここでは、出版社の仕事を6つに分けて解説します。
編集の仕事は、書籍の総合プロデューサーのような役割を持っており、1つの書籍の企画から製本までのすべての工程を担っています。
まず企画を立案し、必要なライターやデザイナー、イラストレーター、カメラマンなどを手配します。企画が採用されたら、構成やレイアウトを考え、記事の執筆をします。執筆はライターに依頼したり、編集者自ら記事を書いたりします。雑誌などの場合は、撮影のためのモデル手配、撮影場所の確保、インタビュー内容の準備も行います。原稿が完成したら、修正して印刷所に入稿し、製本を依頼します。
編集者は、締め切りに間に合うようにすべての工程を管理する、責任重大な仕事です。文章を読んだり書いたりするスキルはもちろん、さまざまな人と関わる機会が多いためコミュニケーション能力や交渉力なども必要です。
デジタル・通販の仕事は、電子書籍や電子コミックなどデジタル関係の企画や制作、配信をします。また、通販サイトの運営や管理、ネットビジネスの開発なども担当します。
デジタルメディアの事業は新しい分野であるため、世の中のトレンドやニーズを把握した企画を考える力や柔軟な発想力が求められます。
近年、電子出版物は売上を順調に伸ばしています。デジタル・通販の仕事は、今後の出版社の経営にとって重要な仕事となるでしょう。
営業の仕事は、広告営業と書店営業の2つにわかれています。広告営業は、広告主になってくれる企業を探す仕事です。広告主となった企業が書籍や雑誌の広告の枠を埋めてくれることで、出版社は広告収入を得ます。書店営業は、自社の出版物をおいてもらう書店を探す仕事です。書店営業は交渉だけでなく、販売計画の策定や発行部数の決定、売上増加を目指した陳列方法の工夫やサイン会開催なども行います。
営業は大きな金額を扱うため交渉が難しく、調整力・粘り強さ・積極性がある人が向いています。本が売れない時代といわれているからこそ、より多くの読者へ自社の本を届けるために営業の仕事はとても重要な役割を持つといえます。
版権とは「著作権」と同じ意味で、出版社の版権の仕事は著作権に関したものです。版権は作者の独占的権利であるため、第三者が勝手に使用することは違法行為です。近年、漫画や書籍がアニメ化されたり映画化されたりすることが多くあります。そのため、版権の仕事を担当する者が複製や販売、契約、出資などの交渉を担当します。最近では、日本の漫画を海外で出版するためのライセンス業務をすることもあります。
校閲の仕事は、出版する予定の書籍や雑誌の文章に誤字脱字がないか、事実との矛盾が生じていないか、不適切な表現がないかなどを出版前に確認し、必要に応じて訂正します。もし出版後に内容の誤りや誤字脱字が見つかった場合、出版社は読者からの、さらには広告を出してくれている企業からの信頼を失ってしまいます。そのような大きな打撃を受けることを避ける上で、校閲はとても責任の大きい仕事です。
高い文章能力がある人はもちろん、細かい作業を集中して続けられる人、常識や法令など幅広い知識を持っている人、責任感のある人が向いています。
管理の仕事は、出版社以外の一般企業と同様に経理・総務・法務・人事の4つの部門にわかれています。経理は、予算決算などの財務全般を取り扱います。総務は、庶務や社内イベント、防災対策など企業全体の運営を円滑に行います。法務は、著作権や商標の管理、契約書の作成、知的財産に関する業務をします。人事は、採用・人材開発・人事異動・出退勤の管理などをします。
出版社への就職は難易度が高く準備も大変ですが、他の職業では味わうことのできない魅力・やりがいがあります。ここでは、出版社で働くことの魅力を解説します。
出版社では、自分がやりたいと思ったことを企画として出せます。編集者になれば、書籍の内容決めから製本まですべての工程を自由に進められます。締め切りを守れば、自分の裁量で進められる魅力的な仕事です。自分が考えた企画が採用され、見事ヒットしたときの喜びは格別です。締め切り前は業務に追われ、残業が多くなることが予想されますが、その分終わった時の達成感はとても大きくなります。
編集の仕事に就いた場合、自分の手がけた書籍が店頭に並んで多くの人の手に渡り、好評価を得たりヒットして有名になったりすると、大きな喜びを得られます。営業の仕事に就いた場合、自分が営業で売り込んだ書籍が店頭に並んで売れていく様子を見て、達成感を味わえます。出版社のどの職種に就いても、自社が発売した出版物が売れることはうれしいことであり、出版社で仕事をする最大の魅力といえるでしょう。
職種によっては、さまざまな人と仕事する機会があります。例えば、本の著者や取材先の大企業の経営者などの著名人、歌手やタレントなどの芸能人、スポーツ選手など、日常生活では出会うことのない人と一緒に仕事ができます。多種多様な職種の人と仕事することで刺激をもらい、自分の仕事への意欲を高めたり新しい人脈を築いたりもできます。このような、出版社以外の職場ではできないような体験をすることで、自分の知性や教養を磨くこともできます。
編集職でキャリアを積むと、将来編集者として独立もできます。ライターやカメラマン、デザイナーなどいろんな分野のプロフェッショナルとの人脈があれば、独立した際に活躍できます。自分のキャリアプランの幅を広げられることも、出版社で働くことの魅力の一つです。
テレビ番組や広告プロモーションの「面白さ」と、週刊誌や書籍の「面白さ」は質が違います。テレビ局・広告代理店は楽しそうな人や明るい人を求める傾向にあります。しかし出版社は、単に楽しげで明るい人よりも、物事を独特な目線から見ている人を求めます。さらに、既存の枠組みでうまく立ち回ることにストレスを感じる人も受け入れてくれます。そのように多様な人材を受け入れることが、ヒットする書籍を生み出すことにつながります。テレビ局や広告代理店の人と話して何かが違うと感じた場合には、出版社を受けてみると良いでしょう。
出版社以外の一般企業では、就活生は皆スーツを着て面接に挑み、専攻している学問やガクチカを評価されます。しかし出版社は、会社によっても異なりますが、基本的に面接に私服で行けて、文系・理系などの出身学部を問われることもありません。ただし、能力や適性はしっかりと見られます。ガクチカの成果を誇らしげに話すのではなく、自分の感性や「なぜそうしたか」などの思考プロセスをアピールすることが大事です。
では、出版社就職をかなえるにはどのような準備が必要なのでしょうか。ここからは、就活を控えた学生が取り組んでおくべきことを具体的に5つ挙げて解説します。
出版社就職に向けて、普段から読書をして文章に触れることは必要不可欠です。読む本はどんなものでも良いですが、1つの分野に集中して読むよりも多種多様なジャンルの本を読むことが大切です。志望する出版社が刊行している本はもちろん、名作といわれている本や話題の新作には目を通しておくべきです。選考の過程で最近読んだ本や好きな本について聞かれることも多いので、普段から読書をして質問に自分の言葉で答えられるように準備しておきましょう。
出版社就活の過程では、膨大な量のエントリーシートを書かなくてはいけません。A4サイズの紙4、5枚の作文の課題が出される企業もあります。志望する企業のエントリーシートや作文の課題には、過去数年分取り組むとよいでしょう。筆記試験の中で作文が課された場合制限時間が設けられるため、時間内に書ききる練習も必要です。文章を書く練習は思考力を鍛えられるので、面接での質問応対の対策にもなります。出版社に就職した後も、編集者となった場合には原稿をチェックする必要があります。文章力がなければ原稿のチェックはできません。大学生のうちに、高いレベルの文章力を身につけておきましょう。
本や雑誌は多岐にわたるテーマを取り扱っています。そのため、それらの作成に携わる人は多くの物事に対して好奇心を持っていることが求められます。そのため、選考では学生の興味や関心の幅の広さが評価されます。筆記試験では、時事問題やエンターテインメントまで、幅広い情報を持っているかどうかが問われます。普段からさまざまな方向にアンテナを張り、情報収集することを習慣としましょう。
出版社への就職はとても難関であるため、周りの就活生との差別化を図るには、出版社でのアルバイトや長期インターンに積極的に参加しましょう。出版社の仕事を体験できるため、就職先で即戦力となれます。また、アルバイトやインターンでの経験は選考過程で必要な志望動機や自己PRの作成に生かすこともできます。さらに、アルバイトやインターンシップを通して職場の雰囲気を実感することで、自分が出版社で働くことに向いているか向いていないか、判断もできます。
難関といわれる出版社就職を成し遂げるためには、実際に働いている先輩からのアドバイスはとても役に立ちます。就活のためにどのような事前準備をしたのか、実際に出版社で働いてみてどう感じているか、積極的に聞いてみましょう。実際に応募書類を見せて添削してもらったり、志望動機を聞いてもらって客観的にアドバイスをもらったりすることも良いでしょう。他の企業と違って、出版社は個性を持った人・面白い人を求めているため、企業側がどのような人材を欲しがっているかもOB・OG訪問を通じて知ることができるかもしれません。
出版社就活では、膨大な量のエントリーシートが課されたり一般企業とは一風変わった筆記試験が行われたりと、出版社以外の一般企業の就活とは違う独特な選考が行われます。そのため、早くから対策をはじめなければ突破は難しいでしょう。ここでは、具体的な試験対策の方法を紹介します。
前述したとおり、出版社は幅広い興味を持つ人材を欲しがっています。筆記試験にはエンタメ、スポーツ、漢字などさまざまな分野の問題が出題されますが、その中にはもちろん時事問題も含まれます。他の就活生と差をつけるためにも、本や新聞、テレビなどからいろんな情報を手に入れ、時事問題の知識を得ておく必要があります。
出版社就活の試験を突破するためには、市販の対策本を利用することも1つの手です。ここでは、「朝日キーワード」「一般教養の天才」の2つを紹介します。「朝日キーワード」は、その年の重要ニュースに出てきた現代用語をまとめた本で、日本と世界の情勢を効率的に学べます。「一般教養の天才」は、放送局や広告代理店などのマスコミ業界を志望する者向けの一般教養対策本です。最近の時事問題や話題のキーワードだけでなく、マスコミ各社の入社試験問題を分析して作成された練習問題が掲載されています。このような対策本を使って、選考の準備を万全にしておきましょう。
選考の面接では、短い時間で自分の感性や思考プロセスを面接官に伝える必要があります。そのため、話す内容はあらかじめ決めておくと良いでしょう。また、志望動機ややりたいことなどの定石の質問は最初だけで、そのあとはフリートークのようになることが多くあります。自分の興味や知識の幅広さ、自分の感性を伝えられるようなエピソードトークを用意しておくことも必要です。
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